ストレスの多い現代社会において、酒でストレスを発散するという方は多いと思います。
私もかつては酒でストレスを発散していたので、その気持ちはよくわかります。
しかしながら、ストレスに身を任せ、酒によってストレスを発散しようとしてもうまくいきません。
なぜなら、酒はコルチゾール値を有意に増加させるからです。
コルチゾールは、副腎皮質から放出されるステロイドホルモンであり、ストレスと非常に関係性の深い物質です。
例えば人前で話す時には、10分程度でコルチゾール濃度が3倍程度まで上昇することが報告されており、ストレス反応と密接に関係しています。
そしてコルチゾールが分泌されることで、血圧や心拍数の上昇による身体機能の向上、筋肉のタンパクから糖分を作り出す糖新生や、脂肪の代謝によるエネルギーの調達、そして免疫抑制効果による抗炎症作用など、ストレスに対応するための機能がもたらされます。
例えば人前に出ると心臓がドキドキするというのは、人前でのストレス反応が活性化しやすく、ストレス反応によって心拍数が上昇してしまう本能の持ち主ということです。
このように、ストレスホルモンは瞬間的に私たちの行動を支配する力を持っています。
もしストレス反応が留まらずにコルチゾールが分泌され続けると、コルチゾールを上手く抑制することができなくなり、疲弊してしまいます。
コルチゾールの調節不全はうつ病や不安症にも繋がることが報告されていますから、生体機能を維持できないほどのストレスはなんとかして避ける必要があるのです。
さて、大量の飲酒はコルチゾールレベルを高めるため、ストレス反応の元になります。
つまり酒でストレスを発散すると言うのは、借金を借金で返すようなもので、ほとんど意味がないどころか、むしろ逆効果なのです。
実際にアルコールによるコルチゾール分泌について検討した研究によれば、成人男性においては一日32g(350mL缶ビール2本分)以上のアルコール摂取は過剰なアルコール摂取であり、1日のコルチゾールレベルを有意に上昇させることが明らかとなりました。
酒を飲まないとやっていられないようなストレスがある時は、酒に頼らずにストレスの元を断ち切るようにするのが最善策です。
コルチゾールが増加すると、血圧が上昇して心血管疾患のリスクが高まりますし、免疫力が低下することで感染症にもかかりやすくなります。
酒でストレスを発散しようとしても、結局ストレス反応を増大させてしまい、そのストレス反応による不調でさらにストレスを受けることになってしまう。
ここではとにかく、酒でストレスを発散することはできないということを覚えておきましょう。