目の前の仕事が何の役に立つのか分からない

「目の前の仕事が何の役に立つのか分からない」

ものが溢れる時代において、我々が労働から求めるのは、この世界に役に立っている、世界と繋がっているという実感である。

しかしながら、なんでこんな仕事があるのだろうと疑問に思いながらやらなければならない仕事ももちろんある。

そういう仕事のことを「ブルシットジョブ」、つまり牛の糞のような意味のない仕事と呼んだりする。

しかし、それは本当に「ブルシットジョブ」なのだろうか?

役に立つかどうかを気にしだすと、私たちはすぐに深刻になる。
「こんなことをして意味があるのか」「もっと効率よく役立つことがあるのではないか」
そんな声が頭の中で鳴り止まない。
役立つこと、意味のあること、それを探して走り続けて、ふと立ち止まると、今ここにあるはずの時間はどこかに消えている。

役に立つのかどうかを考えるのは、実はとても難しいことで、実際には答えなんて出るわけがない。

例えば科学の世界はそんな発見の繰り返しで、最初は「役に立たない」と思われていたことが、何十年も経って突然大きな役割を果たすことがある。

あるいは「これは絶対に役に立つ」と大騒ぎされたものが、結局は忘れ去られることもある。
役に立つかどうかは、時間が決めることで、私たちにはコントロールできない。

それなのに私たちは、今この瞬間からすぐに「メリット」を取り出そうと焦ってしまう。
効率化して、即効性を求めて、何もかも短期的な成果で測ろうとする。
けれど、人間の心も、人と人の関係も、そんなふうに割り切れるものじゃない。

たとえば、友達の雑談を聞いている時間は「役に立つ」のだろうか。
「生産性」で言えばゼロかもしれない。
でも、その時間があるからこそ、私たちは孤独を和らげて、次の日を生きられる。
「意味のあること」なんていうラベルは貼れないけれど、確かに必要な時間だ。

友達との何気ない会話というのは、確実にあなたの、それから友達の考え方に影響している。

その影響が友達の友達に伝播して、世界は回っていく。

仕事でも同じである。

あなたの仕事は確実にこの世界に影響を与えている。

それは小さい影響かもしれないが、確実な影響なのである。

これが意味をもつのは、明日かもしれないし、2億年後かもしれない。

2億年後に役立つかもしれないからあなたの仕事には価値があるのだというのは暴論だろう。納得できるものでもないと思う。

しかしそういう可能性もあるのである。否定することはできないはずだ。

人間の脳はそこまで未来のことを考えられるようには作られていない。やはり分かりやすいメリット、今まさに役に立っているという実感がなければ仕事に打ち込むことはできない場合も多い。

それならば、すぐに結果が出るようなやり方を工夫した方が楽しいだろう。そして今まさに役に立っているという実感を得られたら、仕事は楽しくなっていく。

しかし、工夫してるのに役に立っている実感が得られなかったとしても、深刻になる必要はないのである。

ここで言いたいのは、目の前の仕事に意味が見出せなくても何も問題ないということ。

だって意味はあるから。あなたが意味を見出さなくても、2億年後に誰かが意味を見出す。

余計なことは考えなくてもいい。仕事が楽しくないなら楽しくなる工夫をすればいいし、楽しくなくても別に深刻になることはない。

「目の前の仕事が何の役に立つのか分からない」

もしそんな悩みを抱えているのなら、一度冷静になって欲しい。

今この瞬間、目の前の仕事ができるのは自分だけ。誰かが瞬間移動で自分の代わりに仕事をしようとしても、今この瞬間の仕事だけは誰が取って代わることもできない。

そしてこの仕事は、2億年後の世界に繋がって、その時代に生きる人の人生を形作っている。

そう考えれば、少しはマシになるだろう。

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